顎関節症の治療

●顎関節症治療の変化

以前は咬み合わせや歯並びが悪いとあごに負担がかかり、顎関節症を発症するとされていました。そのため、歯を削ったり、つめ物の交換、歯列矯正をするなどして、かみ合わせに変化を与える治療が主におこなわれていました。

しかしながら、削った歯は元には戻らないなど、患者さんに身体的、金銭的に大きな負担をかけ、しかも成功率はどの治療も高いものではなく、症状を悪化させてしまう人も多くいました。

そのため、世界的に顎関節症の治療は見直され、現在ではこれまでのマウスピースの装着や理学療法のほか、認知行動療法、セルフケアなど、患者さんに負担をかけない治療が主流になりました。

診察 診察

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●顎関節症の主な治療

顎関節症は生活習慣が大きく影響するため、治療は歯科医院だけでなく、自分自身でおこなうセルフケアも大切となります。症状にあわせて、下記の治療をおこないます。


1.歯科医院でおこなう治療

1)マウスピースの装着(スプリント療法)
マウスピースを装着することにより、歯と歯の間にスペースでき、あごの関節や筋肉の負担を軽くしたり、歯ぎしりや食いしばりによるあごの負担を軽くしていきます。

使用目的により、スタビリゼーション型、前方整位型、ピボット型などがあり、顎関節症の治療では、最も多くおこなわれている治療です。費用は3000円(3割負担の方)ほど、2回の来院で作製、お渡しすることができます。

マウスピース マウスピース(スプリント)

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2)薬物療法
痛みなど顎関節症の症状が強いときは、鎮痛薬が使用されます。また、筋肉の緊張を和らげたり、ストレスを緩和するために、筋弛緩薬、抗うつ薬、抗不安薬が使用されることもあります。

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3)かみ合わせの治療  当クリニックではおこなっていません。
1980年代までは、かみ合わせが悪いと顎関節症になると考えられていたため、かみ合わせの治療が盛んにおこなわれていました。

しかしながら、現在ではかみ合わせの治療として銀歯を高額なつめものに交換したり、歯を削ることは、おこなうべきではないとされています。日本顎関節学会では、「症状改善を目的としたかみ合わせの治療(咬合調整)はおこわないことを推奨する」と定めています。

かみ合わせの調整 かみ合わせの調整(咬合調整)

関連するページ   顎関節症の原因  歯ぎしりとかみ合わせ


4)歯列矯正  当クリニックでは、顎関節症治療のための歯列矯正はおこなっていません
かみ合わせの治療と同様に、以前はかみ合わせが悪いと顎関節症になると考えられていたため、顎関節症治療のために歯列矯正がおこなわれていました。現在では治療効果に乏しいだけでなく、身体的、金銭的な負担も大きいこともあり、殆どおこなわれなくなりました。

歯列矯正 歯列矯正

関連するページ  矯正歯科・歯並び  マウスピース矯正


5)外科手術  紹介先医療機関での治療
他の治療で症状が改善されないときは、外科手術がおこなわれることもあります。外科手術は1980年代から1990年代までは盛んにおこなわれていましたが、負担が大きいこともあり、現在では殆どおこなわれていません。重症もしくは難治性の顎関節症、進行性下顎頭吸収の治療に外科手術がおこなわれます。

耳の前方に穴を開けて、癒着した部分を剥がす関節鏡視下手術、関節開放手術、顎関節内部(関節腔)を洗い流して、動きを良くする関節腔洗浄療法などの方法があります。多くは数日間入院して、全身麻酔をして手術をおこないます。

関連するページ  進行性下顎頭吸収


6)理学療法 運動療法
低周波療法、超音波療法、レーザー治療などにより、顎関節周辺の筋肉の緊張をやわらげ、血行の改善をおこないます。また、顎関節のストレッチやマッサージ、全身の運動をおこなうことにより、顎関節症の症状が改善されます。整形外科で腰痛の患者さんにおこなう治療に似ています。

理学療法 理学療法(低周波療法)

関連するページ  顎関節症の理学療法  痛みの改善のための運動療法


7)認知行動療法
歯ぎしり、食いしばり、TCH(歯列摂食癖)、姿勢の悪さなど、顎関節に悪影響を及ぼす習慣やその背景を探し、本人に自覚してもらい、それらを取り除くようご説明をおこないます。スプリント療法に代わり、顎関節症治療の主流になりつつある方法です。

関連するページ  歯ぎしり(歯軋り)  TCH(歯列接触癖)

顎関節症治療は患者様に高額な費用を請求したり、民間療法的な根拠のない治療が、ごく一部の医療機関でおこなわれていますが、当クリニックでは多くの歯科大学病院でおこなわれている標準的な治療を取り入れています。

高額、根拠のない治療の一例  毎日新聞配信(2014年7月4日)


<マウスピース治療>東京の医療法人に措置命令 消費者庁

●●と称する独自のマウスピースで顎の位置を調整すれば、「150の慢性疾患の治療ができる」などとうたったホームページの表示には根拠がなく、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、消費者庁は4日、医療法人社団●●に再発防止などを求める措置命令を出した。

消費者庁によると、同法人は東京と大阪で歯科医院「●●」を運営。昨年7月ごろから今年6月まで、このマウスピースを使えば「ほとんどの顎関節症は完治可能になる」などとし、またアトピー性皮膚炎やぜんそく、認知症などの病気が治療できるかのような表示をしていた。

このマウスピースの作製は自由診療で、1人45万〜80万円かかっていた。各地の消費生活センターには効果を疑問視する相談が31件、寄せられていた。




2.セルフケア

1)不必要に歯を接触させない
歯ぎしり、食いしばりをしないようにします。また、無意識に気付かずに長時間にわたって上下の歯を接触させている癖(TCH、歯列接触癖)をもつ人も多くいます。
上下の歯が接触するのは食べ物をかむときだけで、それ以外では上下の歯を接触させないようにして、顎に負担をかけないようにします。

スマートフォン スマートフォン使用時は、上下の歯を接触させています

関連するページ  顎関節症の予防


2)硬い食べ物は避ける
かむ回数の増える食事は問題はありませんが、あごが痛んだり、口が大きく開きにくいなどの症状があるときは、フランスパン、ビーフジャーキー、タコ、イカなどの硬い食べ物は避けるようにします。


3)両側の歯でかむ
片側でかみ続けると、かむ側の関節に力が強くかかり、顎関節症になることがあります。両側でかむようにしていきます。


4)よい姿勢を保つ
姿勢を正しくして、食事、パソコン業務のときなどは猫背になっていないか注意します。猫背はTCH(歯列摂食癖)をおこしやすく、あごに負担をかけます。また、同じ姿勢を長時間続けるのはあごに負担をかけるので、避けるようにします。

頬杖 頬杖は顎に負担をかけます


5)マッサージ
あごの筋肉が痛むときは、マッサージをおこなうと血行がよくなり、痛みが軽減されることがあります。


6)うつぶせ寝をしない
うつぶせ寝は、あごや首の筋肉に負担がかかります。仰向けで寝るようにします。

睡眠 睡眠中の姿勢にも注意します


7)その他
あごを後ろに引く動きが必要なフルート、サックスフォーンなどの楽器、あごを楽器で挟むバイオリン、強くかみしめるゴルフ、テニス、野球、サッカーなどのスポーツは、可能であれば控えます。片側のあごに負担がかかるので、頬杖をつかないことも大切です。

フルート フルートの演奏は、顎関節に負担がかかることがあります



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