●いびきと睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS)をご存知でしょうか?2003年に山陽新幹線で居眠り運転事故があり、原因が睡眠時無呼吸症候群だったとして注目を浴びた病気です。
睡眠障害は、山陽新幹線の事故だけでなく、スリーマイル島原子力発電所事故(1979年)、スペースシャトル爆発事故(1986年)、アラスカ沖の史上最悪のタンカー事故(1989年)など、大事故の原因にもなっています。
睡眠障害による経済的損失は、日本では医療費を含まない額で年3.4兆円と試算されています。アメリカでは、未治療の睡眠時無呼吸症候群患者の損失は、16兆円(2015年、1496憶ドル)と試算されています。
日本国内のいびき人口は2000万人以上
、そのうち300万人以上が睡眠中に呼吸が止まる病気、睡眠時無呼吸症候群とされています。
いびきをかくと眠りが浅くなり、朝起きられなくなるだけでなく、日中の眠気をもたらし、仕事の能率が低下したり、交通事故などを引きおこす一因になります。また、心臓発作など、様々な合併症を引きおこします。
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●いびきはなぜおきるのでしょう
いびきとは睡眠中に咽頭や舌の筋肉の緊張が低下したときや、鼻や咽頭の病気や障害、肥満などによって気道(空気の通り道)が狭くなるときにおきます。気道がふさがれて狭くなり、そこに空気が通ると粘膜が振動し、いびきの発生となります。
●いびきの原因
いびき・睡眠時無呼吸症候群には様々な原因がありますが、肥満、あごの形、扁桃肥大、鼻づまりが最も大きな原因となっています。
主な原因
肥満/アルコール/老化/小下顎(小さなあご)/甲状腺機能低下/ダウン症/巨舌(大きな舌)/低位舌/鼻閉(鼻づまり)/アレルギー性鼻炎/先端巨大症/睡眠薬/精神安定剤/筋弛緩薬などの薬物服用/副鼻腔炎/扁桃肥大/喫煙
肥満も睡眠時無呼吸症候群の一因
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●睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸(呼吸が止まること)や低呼吸(呼吸の低下)が繰り返される病気です。その結果、十分に睡眠がとれず、日中の眠気、仕事の能率低下、居眠り運転事故などを引きおこしやすくなります。
また、無呼吸や低呼吸は循環機能に負担をかけるため、不整脈、高血圧、心不全などの症状が高い確率であらわれます。
日中の眠気
関連するページ AHIとは(睡眠時無呼吸症候群の診断基準)
●睡眠時無呼吸症候群の症状
代表的な症状は大きないびきや昼間の眠気ですが、全く自覚症状がない人も多くいます。
主な症状
大きないびき/睡眠中の多動/夜間の頻尿/夜尿症/ 熟睡感の欠如/性格の変化(イライラする、キレやすい、うつなど)/夜間の寝汗/夜間の咳/睡眠中の窒息感、息切れ、あえぎ呼吸/早朝の頭痛/性機能低下(男性、ED)/不眠/日中の強い眠気/倦怠感/集中力の欠如/歯ぎしり/ドライマウス(口腔乾燥症)
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●睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群にかかると、高血圧、糖尿病、腎臓病、心筋梗塞、心不全、不整脈、脳梗塞、胃食道逆流症、認知症(アルツハイマー型)、うつ病、がん(前立腺がん、乳がん)などの合併症が高い確率で発生します。
合併症
関連するページ
睡眠時無呼吸症候群の生存率、事故との関係など 糖尿病 慢性腎臓病 胃食道逆流症
●睡眠時無呼吸症候群の治療方法
日本国内の患者数は300万人以上ですが、そのうち治療を受けている人は22万人、うち15万人がCPAPによる治療、7万人がスリープスプリントによる治療を受けているとされています。※1残念なことに病気に気付かない人も多く、治療を受けていない人がほとんどとなっています。
睡眠時無呼吸症候群の治療によって、高血圧、糖尿病、うつ病、頻尿などの症状が改善されることがあるほか、最近では2013年に目まい、耳鳴り、難聴がおきる病気であるメニエール病の症状が改善されることが明らかにされました。
1)CPAP(持続的陽圧呼吸装置、しーぱっぷ) 中等度〜重度に適応、15万人が使用
鼻にマスクを装着して加圧した空気を気道に送り込むことにより、気道の閉塞を防ぎます。一晩中陽圧がかかることによる不快感があり、使用できない人もいますが、家庭でも簡単に使用でき、最も効果の高い方法です。中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられます。

CPAP装着前(左)とCPAP装着後(右)
関連するページ CPAPについて CPAP Q&A 睡眠時無呼吸症候群の治療効果
2)スリープスプリント(口腔内装置) 主に軽症〜中等度に適応、7万人が使用
主に軽度の睡眠時無呼吸症候群、いびき症に用いられる治療方法です。鼻にマスクを使用する治療と併用して用いられることもあります。
スリープスプリントは、身体に負担をかけず安価な治療法として用いられ、口の中に装着することで下あごを持ち上げて、いびきや無呼吸の原因となる下あごや舌の落ち込みを防止します。
スリープスプリントの効果は高く、装着後は気道が開き空気が通り、いびきや無呼吸も自然と減少して熟睡できるようになります。今までのいびき防止対策で効果がなかった人にも有効です。
スリープスプリント(口腔内装置)
関連するページ スリープスプリント スリープスプリント Q&A
3)外科手術 適応症に制限があります
外科手術は睡眠中の気道の閉塞を防ぐためにおこないます。口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)、アデノイド摘出術等の方法があります。昔はかなりおこなわれていましたが、1998年にCPAPによる治療が、2004年にスリープスプリントが健康保険適応になったため、現在ではあまりおこなわれていません。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)前(左)と後(右)
関連するページ 睡眠時無呼吸症候群の外科手術 睡眠時無呼吸症候群の新しい治療
4)薬物治療 ほとんどおこなわれていません、補助的な治療
軽度の睡眠時無呼吸症候群の治療の際に、呼吸を促す薬「アセタゾラミド」などが使用されることがありますが、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群には効果がないと考えられています。
関連するページ 睡眠時無呼吸症候群の薬物療法
※1 井上雄一ほか 歯科医院における睡眠時無呼吸症候群の基礎と臨床 なぜいびきや無呼吸が生じるのか?その理由と症状 The Quintessence
31(7)96-99 2012
※スリープスプリントは、問題がなければ2〜3回のご来院で簡単に作製できます。また、手術や持ち運びの不便な大きな器具は必要ありません。ほとんどの方にいびきの改善がみられます。お気軽にご相談ください。
※いびき治療の受診をご希望の方は、お手数ですが事前にご予約ください。
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