口腔内セネストパチー 横浜・中川駅前歯科クリニック
口腔内セネストパチー
口腔内セネストパチーとは

セネストパチー(体感異常症、体感幻覚症)とは、見た目などからは異常はないにも関わらず、奇妙な異常感や痛みなどがある症状をいいます。

セネストパチーは、1907年にフランス人によって世界で初めて報告されました。日本では1942年に翻訳、紹介され、1959年に慶応義塾大学の研究者が「慢性体感幻覚症の報告」という研究論文を発表してから、専門家の間で知られるようになりました。

100年以上にわたって使われている言葉ですが、世界的に広く使用されている精神障害の分類「精神障害の診断と統計マニュアル」(DSM−5、アメリカ精神医学会)や「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」(ICD−10、世界保健機関)には記載はありません。

現在の分類では単一の病気として認められておらず、統合失調症やうつ病の一つの症状、妄想性障害(身体型)に該当するとされています。

セネストパチーは頭、口の中、胸、腹、手足、皮膚などに症状があらわれ、発現部位で最も多いのが口の中となっています。口の中に限定したセネストパチーを「口腔内セネストパチー」といいます。

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セネストパチーの分類※1

セネストパチーの患者さんは、39歳以下は男性、身体や臓器の訴え(セネストパチー)が多く、40歳以上では女性、口の中の訴え(口腔内セネストパチー)が多い傾向がみられ、しばしば舌痛症を合併します。セネストパチーは下記4つに分類されます。

20〜30歳代、男性に多くみられ、統合失調症もしくはそれに近い症状をもち、統合失調症に準じた治療をおこなう。
30〜50歳代、女性に多くみられ、うつ病もしくはそれに近い症状をもち、向精神薬、抗うつ薬による治療をおこなう。
B群に脳の萎縮(小さくなること)など加齢に伴う変化が加わったもので、向精神薬、抗うつ薬のほか、脳循環代謝改善薬による治療がおこなわれることがある。
体感異常のみを主訴とし、感情障害、自我障害など他の病気をもたないもの。

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口腔内セネストパチーの症状

中川駅前歯科クリニックに来院されている患者様では、「飴玉(もしくは他のもの)がくっついている」という訴えが最も多い症状となっています。下記以外にも患者さんは様々な症状を訴えます。真面目な患者様が多く、自身の異常感に対する確信が強い傾向があります。

一般には加齢、口の中の病気、歯科治療などで生じた微細な変化がきっかけで発症することが多く、中でも抜歯、銀歯やさし歯の装着、かみ合わせの調整など、口の中の変化がおきる歯科治療後に発症することが多いとされています。

逆に歯の根の治療のような、かみ合わせ、舌触りなどが変化しない歯科治療では、発症しにくい傾向があります。

身体への関心が高い患者さんが多く、口の中の環境の変化についていけず、これが口腔内セネストパチーの発症に関わっているのではないかと考えられています。


口腔内セネストパチーの症状

表現しにくい口内の不快感。

歯みがきやうがいをしても症状は改善しない。

不快感のため、ティッシュやハンカチで口をふく。

口内ではかなり現実を帯びて感じるものの、指で触っても遺物は感じない。

歯科治療後や服用している薬(抗うつ薬、向精神薬など)の中断で発症、もしくは症状が悪化。




当クリニックに来院された患者様の訴え(一例)

上の前歯に飴玉のようなものがくっついている。歯ブラシをいくらしても取れないので困っている。(前歯の虫歯治療後に発症。歯科大学病院、10施設以上の歯科医院で、様々な治療をおこなったが治らず来院)

電子部品が歯の根もとから出てくるので困っている。毎晩取り除くのが大変なので、何とかしてほしい。

歯がどんどん溶けている。このままだと歯がなくなってしまうので、助けてほしい。

歯肉から虫がたくさん出てくるので困っている。虫を追い払ってほしい。(歯科医院の顕微鏡で口内の歯周病菌を見てから発症。医科大学病院での精神鑑定、CT、MRIでは異常なし)


歯が歯肉に食い込んでいく  歯が抜けそうになる  苦いものがでてくる

歯と歯肉の間から砂が出てくる  咬み合わせがどんどんずれていく

口の中に小さな虫がいる  ブリッジから酸っぱいものが出る

歯と歯肉の間からドロドロ、ネバネバしたものが出てくる

歯肉が柔らかくなっている  歯や舌が後ろに引っ張られる  ほか


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口腔内セネストパチーの診療科

残念ながらこの病気は、ほとんどの医療従事者には知られていません。そのため、歯科医師や医師に症状を訴えても理解されず、「問題ありません」、「異常はありません」と言われることが多くあります。そのため、症状を理解してもらえる医療機関を探して、あちこちの医療機関を転々とする人が多い傾向にあります。

また、周囲の人にも症状を話せず、一人で悩まれている人も多いようです。治療は、一部の精神科、心療内科、神経科、ごく一部の歯科、口腔外科でおこなわれています。

診察



口腔内セネストパチーの治療

治療によって症状が改善することが多いものの、難治性で完治することは少なく、医療機関に定期的に受診することで症状の悪化を防いでいきます。症状と上手に付き合っていくことも大切となります。


1)精神科、心療内科、神経科
カウンセリング、認知行動療法のほか、薬物治療をおこないます。セネストパチーは統合失調症やうつ病の一つの症状、妄想性障害に該当すると考えられているため、薬物治療では、向精神薬、抗うつ薬などが使用されます。

もともと統合失調症、うつ病などで向精神薬、抗うつ薬を服用していたものの、症状が改善あるいは自己判断で薬を減量、中止したために口腔内セネストパチーを発症することも多くあります。この場合は、薬の増量や再開することにより対処していきます。


症状改善の報告がある薬
スルピリド(ドグマチール)/イミプラミン(トフラニール)/アミトリプチン(トリプタノール)/アリピプラゾール(エピリファイ)/リスペリドン(リスパダール)/クエチアピン(セロクエル)/オランザピン(ジプレキサ)/炭酸リチウム/セルトラリン(ジェイゾロフト)/ミルナシプラン(トレドミン)/パロキセチン(パキシル) ほか

関連するページ  神経障害性疼痛


2)歯科、口腔外科
訴えが「口腔内セネストパチー」でないかを診査します。他の病気であることもあり、例えば「歯と歯肉の間からドロドロしたものが出てくる」という訴えの原因が歯周病であったり、「歯が歯肉に食い込んでいく」という訴えの原因が歯の破折であったり、「苦いものがでている」という訴えの原因が味覚障害であることもあります。

口腔内セネストパチーであれば、精神科などと連携をおこないながらカウンセリング、認知行動療法、薬物治療、マウスピースの装着等の治療をおこないます。つめ物の交換をおこなって欲しい、歯を削って欲しいとのご要望を受けることがありますが、症状がかえって悪化することが多いため、慎重に進める必要があります。


口腔内セネストパチーと同様の症状がある病気の一例
口腔内セネストパチーの症状 同様の症状がある病気
歯と歯肉の間からドロドロしたものが出てくる 歯周病
歯肉が柔らかくなっている 歯周病
歯にものがくっついている 歯周病(歯石)
苦い唾液が出る 酸っぱい液が出る ドライマウス 味覚障害 歯周病 虫歯
苦いものが出てくる ドライマウス、口腔カンジダ症
歯に金属が刺さっている 歯の破折 虫歯
歯に盗聴器が仕掛けられている  統合失調症 
歯に思考盗聴器が埋め込まれた

マウスピース

関連するページ  味覚障害  ドライマウス(口腔乾燥症)  口腔カンジダ症



※口腔内セネストパチーの治療、ご相談を目的として来院される患者様へ
診療時間を十分に確保して診させていただくため、専門の歯科医師が対応させていただくため、お手数ですがご来院前に電話(電話番号:045-910-2277)にてご予約ください。ご予約の際は「口腔内セネストパチーの治療、相談希望」とお申し付けください。


※医療機関のご紹介について
主に地方にお住まいの方から、近くで治療をおこなっている医療機関を紹介してほしいとのお問い合わせを受けます。大変申し訳ないのですが、紹介できる医療機関を存じ上げておりません。まずは、お近くの精神科、心療内科、歯科大学病院等にご相談されるのが良いかと思います。


※1 T.Takahashi A review of recent case reports of cenesthopathy in Japan Psychogeriatrics13(3):196-198



※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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